以前、プロカメラマンがアイドルや芸能人を撮影した写真集を買ってみたんですが、「これはイラストにも活かせそうだ!」と思い、プロカメラマンのポートレート撮影の技術本を読んでみました。
写真集や画集は、見てるだけでイラストが描きたくなりますね
読んでみて、
・色使い、ライティングの設定
・構図
・小物を使ったテクニック
・・など大変ためになりました(^^)
(ただ、カメラ用語はわかりませんでしたが‥)
逆に、
・NGな色使い、光と影の表現
・NGな構図
・・も、とても参考になりましたので、イラストに役立ちそうな部分+面白かった余談を紹介します(^^)
この記事ではあまり触れませんが、3DCG等のアニメーション制作をする人にも、この書籍は画作りの勉強になると思います。
3DCGで重要な被写体に対するカメラの位置やラィティング設定(1ライトや2ライトなど)についても詳細に書かれています。
・最初に「なにを表現したいのか」決めることの重要性
・見栄えがする構図とNGな構図の例
・真っ先に目がいく視線誘導テクニック
・人物のポーズと雰囲気をあわせると違和感がなくなる?
・その他、イラストに関係ないけど面白かった余談
注意として、この書籍は主に女性モデルがメインです。
男性モデルは出てきません(解説に男性モデルの場合は~等の余談が少しあるだけ)。
ポートレートって何?
ポートレートとは肖像画や肖像写真の意味で、人物を主な被写体とした写真のことをいいます。一般的には、望遠レンズなどを使って背景をぼかして省略し、背景から人物を際立たせるような写真がポートレートとしてよく撮影されます。
CANON IMAGE GATEWAYサイトより
ポートレートという言葉は聞いたことはありましたが、カメラの専門用語だったんですね(^^;)
私もこの記事を書くのに調べて、初めてちゃんと理解しました
最初に「なにを表現したいのか?」決めることの重要性
メインはどうするか?=どこを1番みせたいのか?
①人物
②人物と背景
③人物の一部(例:口や目など)
書籍では、このように書かれていました。
メインが、
①人物→人物のカッコよさ、可愛さ、雰囲気など
②人物と背景→ストーリー性など
③人物の一部→口や目の場合、口元の艶(つや)っぽさ、目力など
著籍には書かれていませんでしたが‥③の使い道は、おもに商品広告かな?と思います。
口の場合は、リップの広告。目の場合は目薬やコンタクトレンズなど。
・人物がメインなら人物にピントを合わせる(他は ぼかす)
・目や口がメインなら目や口にピントを合わせる(三分割法やメインの近くに手を添えるなど・後述)
・人物や背景メインのストーリー性を出すなら、両方にピントを合わせる
何を1番に見せたいのか?によって、撮影(構図)や編集の仕方が変わります。
ふむふむ、イラストも同じだよね
ダメ構図→よい構図にする4例+α
①アップ構図(顔~肩くらいまで)の場合は、首ではなく頭部をカットする
②「関節」部分でカットしない(例:首・腰・ひざなど)
③全身を入れる構図は人物の足まで入れること、途中でカットしない
④立ちポーズは、アングルを高めにしない(腰あたりのアングルがベスト)
<①アップの構図(顔~肩くらいまで)の場合は、首ではなく頭部をカットする>
・関節でカットすると、生首のような違和感が出る
・逆に、頭部をカットすることで、顔に視線が誘導される
<②「関節」部分でカットしない(例:首・腰・ひざなど)>
前述している首でカットしないと似ていますが、理由を調べてみると‥こんな記事を発見しました↓
「そこから先、画面の外の部分が想像できないので、写真を見る人が落ち着かない気分になる。不安になる」
見る人を不快・不安にさせる、「関節切り写真」を知っていますか?より
(中略)
たとえば、ひじの部分で切ると、そこから先の前腕が真っすぐなのか折れ曲がっているのか、前腕の太さがどうなのかは、情報がありません。「逆に、前腕が半分か3分の1、4分の1でもあれば、残りの前腕の様子などを無意識のうちにでも想像している」
https://coconala.com/blogs/554674/119694
今まで なんとなくでトリミングしていましたが、「その先が想像ができない」のが理由なんですね
<③全身を入れる構図は人物の足まで入れること、途中でカットしない>
足もとまで入っているかで、画面の安定感が変わってくると言われていました。
微妙に切れていると、どこか落ち着かない画になる。
前の方に書いてある「その先が想像できない」にも関係ありそうだね
<④立ちポーズは、アングルを高めにしない(腰あたりのやや低めのアングルがベスト)>
高すぎても低すぎてもNGと言われていました。
理由はアングルが高すぎると、モデルが頭でっかちで、足が短くなり、スタイルが悪く見えるそうです。
逆にアングルが低すぎると、威圧感が出てしまって女性のポートレートに向かない。
※後述する「足長」効果やビル・空の高さを表現したい場合などは別ですが
全身が入る立ち絵って、1枚絵では使い道が少ないですが、ゲームやアニメなどの「キャラ紹介」では頻繁に使われていますね。
ただし、女性の「バストアップ」撮影は、やや上からの撮影がよいと言われていました(フカン構図は可愛さがアップする)。
バストアップ撮影でアオリ構図にしてしまうと、二重アゴになってしまったり、鼻の穴が見えてしまったり、可愛さポイントが減ってしまうのだとか‥。(おまけに、モデルさんにも喜ばれない)
イラストだと、その辺は上手く補正できるのでカメラ撮影は大変だなぁという印象です。
写真の場合でもPhotoshop等で多少は加工していると思いますが、イラストよりは自由度が低いでしょうね‥(^^;)
逆に、ビルや空の高さを強調したいときや、モデルの足長効果を出したい時はアオリ構図が便利だと書かれていました。
ただし、全身を入れる。
こういう構図にすると、身長が高そうでカッコよく見えるね
最初に目が行く視線誘導テクニック5選
・横長の構図はストーリー性を出すのに向いている(背景が広めに入るため)
・縦長の構図は主役を強調できる
・消失点に1番みせたいものを置く
・最初に目が行ってほしいものは明るくする
・顔(たとえば口など)に視線誘導をしたい場合は、口の近くに指を添える
横長の構図はストーリー性を出すのに向いている(背景が広めに入るため)
横長構図は、人物と背景の両方に目が行く構図で、情報量が多い。
モデルと背景のバランスを見ながら構図を決める。
例:奥行や三分割法で両取りする
※三分割法とは、画面を縦横3等分し、交わった部分に見せたいものを置く視線誘導テクニック
縦長の構図は主役を強調できる
縦長構図は、主役(人物)に目が行きやすい。
人物は基本「縦長」なので、縦長構図におさまりやすい。
ゴチャゴチャした背景も縦で撮れば、情報を制御できると言われていました。
基本構図は、頭の上の空間を広めて、下の空間は極力空けない(バランスが悪くなるため)。
消失点に1番みせたいものを置く
よく見かける構図だと思いますが、書籍では「日の丸」構図と言われていました。
抜け道を背景にして、被写体をその消失点上に配置することで被写体を浮き上がらせる効果がある。
マンガで使われている「集中線」なんかも似たような効果があるよね
ほか、最初に目が行ってほしいものは明るくする
写真をみたとき、最初に目が行くのが「明るい部分」です。
1番見せたい部分を明るくする。
イラストの場合も、明るい部分のみ・暗い部分のみの絵より、明るさと暗さのコントラストがある絵の方が目を引きやすいと言われています。
1番見てほしい部分を明るくしてみましょう(^^)
書籍では、カーテンから差し込む細い光を目に当てて、視線を目に誘導していました。
上記の写真では、最初に目が留まるのは人物の斜め上にある壁に当たっている光(1番明るい)だと思います。
その次に人物の顔。
ちょっとお高いですが、こちらの書籍も構図や視線誘導の勉強になります(著者はアニメ映画の制作者なので、アニメ映画メインの内容ですが、色・構図の面で勉強になります)↓
顔(たとえば口など)に視線誘導をしたい場合は、口の近くに指を添える
1番みてほしい部分に手を添える方法が紹介されていました。
例えば、サイドライト(横から当てた光)で顔の色んな部分に光が当たっている場合は、手を添えて目立たせる。
人物のポーズと雰囲気を合わせると違和感がなくなる
・しっかりメイクは強めの光と陰影が映える
・ナチュラルメイクはやわらかい光を回す
陰影をキッチリだすような写真に仕上げたい場合は、モデルのメイクもしっかり施す。
メイクが薄いと顔の印象も薄くなってしまうそうです。
逆に、ナチュラルな感じのモデルは柔らかく、ふんわりと回り込むような光が合う。
また、ポーズにも気を配ること。
・しっかりメイク→艶(つや)っぽいポーズ・エロカッコいいポーズなど
・ナチュラルメイク→可愛らしいポーズ
これらを逆にしてしまうと、わざとらしいような違和感が出てしまうので、メイクとポーズは合わせる方がよいとされています。
光の表現→順光・斜光・逆光とは?
<特徴>
順光:色のコントラストが高く、色鮮やか、影が出やすい、扱いはやや難しい(写真撮影の場合は、モデルさんがまぶしがる)
斜光:陰影がかなり付くので、男性のポートレートまたはクール系のポートレートに合う
逆光:もっとも扱いやすい光、ふんわりとした雰囲気になる、ただし被写体が暗くなりがちなので明るさの調整が必須
神絵師さんたちのイラストを見ていても、よく「逆光」表現が使われていますね
ちなみに、撮影の現場では人工的な光(ストロボ)を利用して逆光だけど顔が暗くなりすぎないように調整しているようです。
プロカメラマンのアイディアがイラストの参考になる例(小物や色味を使って○○表現)
全部を紹介することは出来ないので、参考になったものを一部紹介します。
①平凡な顔のアップ→麦わら帽子から差し込む光を顔に落とす
②青+マゼンタで透明感をアップさせる
③窓枠を使って視線誘導
④余白の使い方→モデルの前・後・頭上で印象が変わる
①平凡な顔のアップ→麦わら帽子から差し込む光を顔に落とす
麦わら帽子から顔に光が差し込んでいるという情報が夏っぽさを感じさせますね(^^)
②青+マゼンタで透明感をアップさせる
私も疑問に思っていたんですが、透明感を出すために肌に青~緑系を使うと、顔色が悪くなるよね?‥と。
そんな時は、青+マゼンタを使うと顔色が悪くならず、透明感のある画に仕上がるそうです。
③窓枠を使って視線誘導
一枚絵でもよく見かける構図ですが、ぼかした窓枠のおかげで人物に視線が誘導される構図です。
④余白の使い方→モデルの前・後・頭上で印象が変わる
余白を大きく取ることで、その場の空気感が伝わり、より物語が伝わりやすくなると言われていました。
余白を作る方向で印象が変わる
・目線の先に余白を作る→自然な印象
・頭上に余白を作る→モデルを目立たせた風景画
・目線とは反対方向に余白を作る→思考、歩いてきた道のり(立っている場合)を表現
余白は人物の目線の方向が基本だと思っていましたが、色んな使い方ができるんですね
その他、イラストに関係ないけど面白かった余談
・瞳の光はレフ板で人工的に作っている?
・カメラ撮影の場ではモデルさんとのコミュニケーションが大事
瞳の光は「レフ板」で人工的に作っている?
画家になりたいorなっている以外の絵師さんって、好きなアニメや漫画、ゲームなどの影響から絵を描き始めたと思うんですが、瞳の下側に入るハイライトは「レフ板」で人工的に作られた光ってことを知っていましたか?
私は知りませんでした(^^;)
とくに逆光だと、瞳に光が入らないので、レフ板で人工的にハイライトを追加して瞳にうるおいを与えているのだとか。
カメラ撮影の場ではモデルさんとのコミュニケーションが必須
モデルさんを撮影するときは、シャッターを切ることがコミュニケーションになると書かれていました。
モデルさんはシャッターを切ってもらえないと「ポーズや表情がダメだったのかな?」と不安になり、良いポーズや表情を引き出せなくなるそうです。
テンポよくシャッターを切ることで「いい感じだよ!」と伝え、モデルさんのテンションを上げる。
あと、慣れていないモデルさんだと、急に「笑ってください」とっても不自然な笑いになる。
なので、自然な笑顔を引き出すための環境を作ること。
周りのもので遊んでもらう、走ってもらう、食べ物をたべてもらう、撮影前にカメラマンとの雑談を楽しむなど。
ポートレート撮影って、大変なんだね~
共同作品・アシスタントを雇う例外はありますが‥絵だと ほぼ1人での作業になるので、対人物のカメラ撮影は大変なことがわかりますね。
※ただし仕事の場合は、クライアントがいます
デジタル絵だと色味の変更や一部の描きなおしも、カメラ撮影よりは簡単ですしね(^^;)
まとめ:写真集みてるだけでもイラストが描きたくなる
・プロカメラマンが撮影した写真集は見てるだけで勉強になるし、絵が描きたくなる
・「なぜ、こういう構図・光・影にしたのか?」言語化されているので、絵を描くときの勉強になる
・プロカメラマンが考えた小物などを使ったアイディアが絵にも生かせる
カメラ用語はわかりませんでしたが、ポートレート撮影の書籍は絵の勉強になりました(^^)
透明感の出し方や小物を使ったアイディアなど、読めば読むほど絵で試してみたくなります。
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