小説・マンガ・アニメなど、作品考察をしたことはありますか?
なぜ、このような表現をされているのか?
あの登場人物(脇役)は、その後どうなったのか?
作者のメンタルが作品に表れるってホント?
時代背景の影響もあるの?
今回読んだこちらの「批評理論入門」は、作品の考察力(読み解く力)をアップさせてくれるような内容でした(^^)
さらに、マンガ・小説など創作者は名作つくりのヒントにもなる書籍だと思います。
・読者が初めて作品を読む(見る)ときの心理状態
・登場人物へ共感させる方法
・読者に想像させる余地を上手く残すコツ
・じつは多くの作品は、神話や名作を参考にしている
これらが特に参考になりました。
個人的に印象に残っているのが、
「読者には見えてるけど、登場人物には見えていない‥ハラハラ感」
たとえば、
恋愛系の作品なら、登場人物の心の声(好意)は読者だけに聞こえる。
ホラー系の作品なら、「後ろ!後ろにいる!」というのは読者にだけ分かる。
・作品の考察をしたい人
・マンガ家、小説家になりたい人
・作品の楽しみ方がわからない人
フランケンシュタイン?こんな怪物が出てくるんでしょ?↓
‥という知識しかない状態でした(^^;)
↓
怪物の名前×
怪物を作り出した人の名前〇
(※正確にはヴィクター・フランケンシュタイン)
書籍・フランケンシュタインのネタバレが続きます。
ネタバレあり!:フランケンシュタインの簡単なあらすじ
↓
偉業を残すため、フランケンシュタインは遺体を寄せ集めて人造人間(怪物)を作る
↓
作った怪物があまりにも醜かったので、フランケンシュタインは怪物に失望して、見捨てる
↓
見捨てられた怪物が1人で生きて行こうとする
↓
怪物はあまりにも醜かったので、人間たちに受け入れてもらえない
↓
怪物は、書籍や人から教養を得る
↓
怪物は目が見えない老人と心を通い合わせるが、結局裏切られる
↓
怪物は自分が迫害されつづけるのは、生みの親(フランケンシュタイン)のせいだ!と恨みを持つ
↓
怪物はフランケンシュタインに復讐するため、フランケンシュタインの身近にいる人間を次々と殺して行く
↓
フランケンシュタインも怪物を始末しようとする
↓
フランケンシュタインが北極海で亡くなる
↓
怪物もどこかへ消えてしまう(生死不明)
ちゃんと「フランケンシュタイン」の小説を読んだわけではありませんが、私は怪物の方に感情移入をしてしまいますね。
フランケンシュタインの方が悪魔やわ‥(^^;)
物語の導入部:読者は情報収集に必死の状態
前提知識がない状態の読者は、小説世界の中の色々な情報を頭に叩き込まなければならない=負担が大きい状態
・人物の名前
・登場人物同士の関係
・場所
‥などの情報を記憶しつつ、絶えず推測しなければ物語ついていけなくなる。
なので、「フランケンシュタイン」の導入部は現実的+非現実的な要素を織り交ぜる‥という工夫がされています。
非現実的な物語を現実的な手紙という枠組みの中に収めることによって、その内容に信憑性を与える工夫をしている‥とされています。
小説はこのようにして面白くなる
ストーリー:出来事が起こった時間順に並べた物語の内容
プロット:物語が語られる順に出来事を再編成したもの
小説は作者が書きたいことが最も効果的に読者に伝わるように、出来事や描写の配列を組み替える工夫をする、つまりプロット形式
答えを先延ばしにすることでサスペンス性を出す
・○○は、その後どうなった?
プロットを操作して、答えを先延ばしにする伏線。
裏をかいた結果になることで、読者は不安と恐怖を抱きつつ、事の成り行きを見守る=ハラハラする展開
大体の人がこうなるだろうなぁ‥と思っていたら、予想外の展開になる‥王道ですね(^^)
偏った視点が話を面白くする
主人公の偏った視点からの推測しか読者に与えないという方法によって、サスペンス感を倍増させる。
小説は事実だけが書かれているのではなく、登場人物の間違った予測のみが読者に与えられる場合もある。
・語り手による願望≠真実
・詭弁(きべん・正しく見せかけること)
・自己正当している
・弁解満ちている
・猪突猛進で周りが見えていない
・自意識過剰
‥などを読者自身が見破ることで小説が面白くなる。
読者自身が先を予測する(見破る)例として、フランケンシュタインの一場面を紹介します。
怪物はフランケンシュタインに復讐するため、フランケンシュタインの弟や親友など、彼の身近な人たちを次々に殺して行く
↓
フランケンシュタインは「次に殺されるのは自分」だと思い、逆に怪物を探しに行く
↓
自分の奥さん(エリザベス)を「1人」にして‥
‥と読者は気づいているのに、主人公(フランケンシュタイン)は気づいていない展開のイライラしたり、ハラハラしたり。
こういう展開を意図的に作ることで、物語がより面白くなる。
「人間というものがいかに現実を歪めたり、隠したりする存在であるか」
この部分、めっちゃ共感‥(^^;)
それぞれの視点証言を多角的に見ると、また違った楽しみ方ができます。
・主人公
・第三者
・語り手
色々な登場人物の視点証言から真実が見えてくる‥と書かれています。
1人だけの焦点だと、その人の偏見などが入っていて事実が見えてこない。
現代の正しい情報を知る方法も、1つのメディアの情報を鵜呑みにするのではなく、色々な情報を多角的にみることで、偏見を防ぐ‥ですからねぇ(^^;)
物語の中に○○部分があること
もとは穏やかだった怪物が「怪物(殺人鬼)」になってしまった原因は何でしょうか?
・親(フランケンシュタイン)に捨てられた
・他人(人間)から迫害された
・信じていた人に裏切られた
・社会の不公平さ、残酷さを知ってしまった
・孤立してしまった
孤独・裏切り・不公平さが、人を怪物にする。
皆さんが怪物の立場なら、どう思いますか?
・怪物かわいそう‥
・自分もフランケンシュタインに復讐するかも‥
‥と答えた方は、怪物に感情移入や共感していますね。
人間らしさを備えているからこそ、読者は共感できる。これが物語をおもしろくする鍵と言われています。
物語に統一感を出すちょっとした技法:何かをモチーフにする
フランケンシュタインの小説では、月が何かを暗示していると書かれていました。
月が出てくると、その前後に必ず何かが起きる。
「不吉な出来事を予言する目印」‥になっている。
何かをモチーフにすることで、作品全体のテーマや雰囲気の統一を出せる。
・海
・森
・太陽
・雨
・水
‥なんかも自分の作品に合わせて、モチーフに使えそうですね(^^)
小説を「読み解く」上で1番重要なことは○○すること
小説を読み解くには、
・感受性の豊かさ
・自分の頭で考えること
‥が必要とされています。
※感受性が豊か→色んなモノの影響を受けやすく、感情移入しやすい。
①恋愛小説にしか共感できない低度な読者
②恋愛以外の感情にも共鳴できる中度な読者
③自分の頭で考えて、共感できる高度な読者
小説を深く読み解くことができるのは、③の読者。
逆に、①の読者だと恋愛小説以外は、おもしろくない!となるんじゃないですかね(・・?
昔「CROSS♰CHANNEL」というゲームで主人公(太一)に感情移入しすぎてポロポロ泣いたなぁ(^^;)
たくさんの「考察記事」を読むことで、多角的に読み解く
読者が読んだことのある書籍を登場人物が読んで、どんな反応をするか?
・ifの世界を想像したり
・描かれていない過去や未来を想像したり
物語が更におもしろくなり、自分では想像できなかった他人の予測に関心させられます。
創作物は作者自身の人格も影響?
フランケンシュタインの著者「メアリー・シェリー」(女性)も波瀾万丈な人生を歩んでいます。
メアリー母がメアリーを出産して亡くなる
↓
メアリー父が再婚
↓
義理の母とメアリーは上手くいかない→メアリー病む?
↓
メアリーが16~17歳の頃、パーシー(男性・既婚)に出会う
↓
メアリーとパーシーの恋愛にメアリー父激怒
↓
メアリーとパーシー駆け落ちする
↓
パーシーの元妻?が自殺、メアリーとパーシー結婚
↓
メアリーとパーシーの子供、4人中3人が死亡
↓
パーシー30歳ころ死去
↓
メアリー53歳で死去
‥なんだか、かなりドロドロしていますね‥(^^;)
因果応報とか言われそうな‥、昼ドラが作れそうな‥。
世間で有名になる作品の著者って、特殊な人生辿っていることが多い気がします‥(・・?
メアリーは、両親(父・母も有名な著作家・作家)の作品をより厳しい容赦のない物語へと書き換えた‥とされています。
心の奥底に巣食う両親に対する不安や願望から、自らを解放するために書かねばならなかったと。
作者(メアリー)と主人公(フランケンシュタイン)の創造行為は、抑圧された無意識が形をとって現れたものであることを暗示している点で共通している‥と書かれています。
フランケンシュタインは、自分(メアリー)の人生を書く経験についての物語としても読める。
フランケンシュタインが言い訳がましい懺悔をする点も、メアリーの不倫に対する許しを請う行為(?)と似ているんだろうかね(・・?
その時代の背景も考察に役立つ
・社会的
・政治的
・経済的
・・な時代の影響。
例えば、
フランケンシュタインは200年以上前の作品なので、いまなら大バッシングを受けるであろう「男尊女卑」の名残が至る箇所であります。
・女は家を守る、男は外へ出ていく
・女は男に自らの命を差し出す
時代の文化的背景を探ると、重要なモチーフやテーマが見えてくる。
余談ですが、メアリーはフランケンシュタインの小説を世に出した当初は「匿名」を使っていたそうです。
理由は、文学の世界で女性の立場は無いに等しかったからと言われています。
2021年のいまなら「女尊男卑」VS「男尊女卑」のフェミニズム対立が時代背景になるんでしょうかね(^^;)
個人的に印象に残っている教訓や部分
・ひどい扱いをすると、元はどんなに良い人間であっても邪悪になる
愛情に対して軽蔑で報いたり、社会的存在である生き物を社会から隔ててクズ扱いしたりすると、悪意に満ちたものへと豹変してしまう。
訳の分からない存在であるが故に恐怖や不安を与えるものを私たちは怪物と呼んで排除する。
その概念の範囲は、自分の理解の及ばない他者を対象として無限に広がる可能性もある。
殺人犯は怪物と例えられる。
怪物が生まれてきたのには理由があり、怪物となるに至ったプロセスがあるのだということを主張している。
・人間の企てが人間の手に負えなくなって、作った側に降りかかってくるという話は、いつまでたっても私たちにとって怖い話
人類がさらなる力を手にする未来を、私たちは漠然とした不安を覚える。
・途中から一切描かれなくなった登場人物がどうなったのか?と予想するのが楽しみ
直接描かれていないけど、その後、脇役のあの人はどうなったの?
人気の作品だと、小説は映画化されたり、番外編が出たり、マンガ・ラノベなどは考察記事や同人誌などで補完されますね(^^;)
・名作になる話は、神話や過去の名作をもとに作られている
「失楽園」(アダムとイヴ)の話がちょっと面白かった。
神の禁を破って「善悪の知識の実」を食べ、最終的にエデンの園を追放されるが、罪を犯した者にも神からの救いがある話のようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%B1%E6%A5%BD%E5%9C%92
フランケンシュタインは失楽園を参考にしているが、フランケンシュタインでは怪物には一切の救いを与えない。
創造物はまったくの1から作れる人はいないと、イラストの世界でも言われています。
絵を描くときは「資料を見なさい」とよく言われていますしね(^^;)
まとめ:難しい表現もあるが考察や作品つくりの参考になった
・作品をおもしろくするポイント
・作品(小説)の仕組み
・作品の考察方法
‥など創作者として、とても参考になりました(^^)